フォイヤーシュタインのプログラム FIEとは?,発達障害や知的障害の不安をお持ちの方も。四谷にある個別指導塾「よむかくはじく」

フォイヤーシュタインのプログラム FIEとは?

FIEとは?

FIE(Feuerstein's Instrumental Enrichment フォイヤーシュタインによる,認知の力を強化するための教材)とは, イスラエルで開発された, 戦略的思考・ロジカルシンキングを鍛えるための教育メソッド(とそのための教材)です. 金融や学問の分野で世界的に活躍する人材を生み出してきたユダヤ人の智恵がFIEに詰まっています.

FIEは認知心理学者ルーベン・フォイヤーシュタイン教授によって開発されました. 1950年代に,彼はジュネーヴ大学で認知心理学の大家であるジャン・ピアジェ教授やアンドレ・レイ教授による教育を受けました.パリ大学ソルボンヌ校で博士号をとった彼は,ピアジェらと自身の研究結果を総合し,ついにFIEを生み出したのです. そして1980年に初めて書籍の形で世に知られるようになりました. 現在、FIEは80カ国以上で採用され、17言語に翻訳されており,全世界的に知られています.

WISCとFIEの関係

WISCは子供の知能を測定するための検査として有名ですが, FIEの授業により子供の知的能力が鍛えられ,WISCの数値が上昇した例がいくつも報告されています.

たとえば,WISC-IVの「類似」という下位検査は,共通の概念を持つ2つのことばを聞いて、どのように似ているかを答える課題です.つまり「類似」課題では子供の「比較する力」を見ているのですね.そして,それはFIEの「比較」という教材によって鍛えることができます.

WISC-IIIからWISC-IVに版が更新されるに伴い,流動性推理能力の測定がより重視されるようになりました. 流動性推理とは,演繹や帰納などの推理能力を使って,自動的には処理できない問題を解く能力のことです.簡単に言えば,「地頭の良さ」というようなものですね.FIEはまさに「地頭を鍛えるための教材」といってもいいかもしれません,

「脳トレ」との類似点

思考力を鍛えると言えば,日本では川島隆太教授による「脳トレ」が有名ですね. あえて言えば,FIEは「脳トレ」に似ています. では,FIEと「脳トレ」を比較してみましょう. (「比較」は非常に大切な認知能力です.それを伸ばすための教材,その名も「比較」がFIEのひとつに数えられています.)

FIEと「脳トレ」は次の2点で似ています.

幅広い対象    対象は子供から大人まで
コンテンツフリー 教材はパズルのようなものが多い

非常に幅広い対象

FIEは非常に幅広い人々を対象とします. FIEは,下記のような世界的な一流企業の企業研修に採用され, 博士号を持つエンジニアやマネージャーの思考力を鍛えてきた実績があります.

プジョー
ルノー
ヒューレット・パッカード
IBM
ネスレ
モトローラ
Israel Aircraft
SNECMA

と同時に..

アメリカの数々の大学で学生の能力開発のために採用され,
ニューヨークでは公立の小学校の算数の授業に取り入れられています.
全世界で,発達障害・知的障害をもつ人への教育に使われています.

コンテンツフリー

FIEのそれぞれの教材は,見た目はパズルのようなもので,コンテンツ(内容)をほとんど含んでいません. たとえば,歴史の年号,英単語,円の面積の計算方法,細胞の構造...こういったものはコンテンツです. そういったコンテンツをただ暗記するのではなく, 頭の中で創造的に組み合わせること,これが真の勉強ではないでしょうか? FIEが重視するのは,コンテンツを丸暗記していくことではなく,それらを如何に組み合わせるか,です.

思考力を鍛える道具として,数学もなかなかに有用です. しかし数学は積み上げの教科です.戦略的思考を数学で教える前に, まずは具体的な計算手法といったコンテンツを生徒さんに積み上げてもらわないといけません. これが原因で,たいていの生徒さんは数学嫌いになってしまうんですね...

FIEはこういった知識を生徒に要求しません. だから,純粋に生徒さんの思考力に磨きをかけることができます. 勉強の苦手な生徒さんもこれならやりたがります.

「脳トレ」との相違点

「脳トレ」とちがって,

FIEは所定の訓練を受けた有資格者が,生徒と対面形式で(ライブで)授業することが求められています.

生徒に問題を解かせ,その際の解答プロセスを生徒と教師が話し合い(ディスカッション)をします. たとえ生徒の解答が教師の用意した解答と違っても,生徒の解答プロセスが十分合理的であれば,生徒の解答は賞賛を持って認められます. 解答は必ずしも一つではないのです.大事なのは,解答に至るプロセスです.

教師と生徒の知的なやりとりがFIEのもっとも大事な部分です.決して生徒に解きっぱなしにさせません. これがFIEの対象を幅広く設定できる秘訣です. 使う教材は同じFIEであっても,生徒さんのニーズ(困っていること)によって教師は「何を教えるか」を変えることができます. FIEは非常に柔軟にデザインされているので, 知的水準の高い人には高度なことを,まだ低い人には基本的なことを,同じ教材を使って教えることができるのです.

私たちのFIEの目的 勉強の仕方を教えます

私たちがFIEを使う目的は,

生徒が自立した学習者となることです.

別の言い方をすれば,

勉強の仕方を生徒に教えることです.

フォイヤーシュタイン教授が,このことをとてもわかりやすいアナロジーで説明しています.

ここにお腹をすかせた人がいるとします.あなたは彼に魚をあげることにしました.
彼は魚を食べて,満足しました.
しかし,しばらくすると彼はまた空腹を覚え,あなたに魚を求めました.
あなたは,再び彼に魚をあげることにしました...

これでは永遠に終わりがないですね.彼は魚を求め続け,あなたは魚を彼に与え続けます.
FIEの考え方はこうです.

あなたは彼に,魚の釣り方を教えるのです.
魚の釣り方を知った彼は,腹が減ったら川に行き,魚を釣るようになりました.
もはや彼はあなたを必要としていません.彼は自立した人間になりました.

もうおわかりのように,魚は「コンテンツ」を意味します.そして,魚の釣り方が「勉強の仕方」を表します. 私たちは今まで,家庭教師として,ひたすら,生徒さんに魚を与え続けました.そして悟りました.生徒に魚の釣り方を教えないといけないことを. そうしなければ,生徒さんに豊かな未来がないことを.これが,私たちがFIEを重視する理由です.

FIEの構成

FIEは次の3つによって構成されています.

FIEスタンダード 標準的な難易度 全14教材
FIEベーシック  基礎編 全9教材
FIEタクタイル  なんと,「触覚」を用いたFIE.とてもおもしろいですよ!

それぞれの教材の紹介は追って紹介して参ります. しばらくお待ちください.

FIEと教科学習の関係

FIEは,あくまで,生徒さんのニーズ(困っていること)の解決のために使う「道具」です.たとえば,算数の文章題を解けるようになりたい生徒さんには,FIE「分析的知覚」を使います.そして,FIEによって生徒さんが認知機能を身につけてきたら,本来の目標である教科学習を教えます.FIEからより具体的な目標解決への橋渡しを「ブリッジング」といいます.